1. 服の選択肢が少なすぎる
140kgあった頃、服なんて“選ぶ”余地はありませんでした。
普通の人みたいに、「このデザイン好きやな〜、サイズ合うかな〜?」
なんて考え方、私には無縁でした。
まず第一に、“サイズがあるかどうか”がスタート地点。
私の服のサイズは4XL。そうなると、そもそも選べるブランドがめちゃくちゃ限られてきます。
「大きいサイズ メンズ」と調べるも気に入るデザインに出会うことなんてごくわずか。
そうすると服はデザインや機能性、自分が気に入ったものよいうより、
着れるものを選ぶ。”作業”になっていました。
あの頃は友人が服を買いに行くのに付き合って、デザインを気に入って
服を選んでいる友人が本当に羨ましかった。
だけど、今は違う。デザインで服を選べるようになった。
「この服カッコええな」「これ、どの色にしようかな」って、
サイズじゃなくて“好み”で迷える喜び。それが今はある。
試着室で鏡を見るたび、「おっ、これ似合ってるかも」ってちょっとニヤけてまう自分がいる。
昔なら「どうせ似合わんし」「パツパツやろ」って試着すら避けてたのに。
おしゃれって、ただの“外見”やと思ってたけど、ちゃうかった。
「自分を好きになれるきっかけ」やって、今ならわかる。
2. ユニバを楽しめない(ハリドリ事件)
高校卒業後、10人くらいでユニバに行った時のこと。
当時の体重は約120kg。
みんなで「ハリドリ乗ろう!」ってなって、絶叫系が得意な私はノリノリ。
あんまり得意じゃない友人まで説得して、1時間半並んだ。ワクワクしながら。
いよいよ乗車。
係員の人が安全バーをチェックしてるとき、なぜか私のことを何度も見る。
……いやな予感。
案の定、安全装置が私のボディに勝てず、ロックできず。
上司っぽい人が来て、二人がかりで押してくれるも撃沈。
そして言い渡された一言。
「すいません、安全装置がかからないので、お乗りになれません」
……え?説得してまで並んだのに?
まさかの、私だけ降り口送り。
ハリドリが出発するのを見送りながら、
「どうお笑いに変換しよう……!」ってずっと頭フル回転。
おそらく1分も経たずハリドリは戻ってきたのでしょうが、
過去最長に長く感じた1分間でした。
でも心の中ではずっと、
「楽しむって…選べる側の特権なんか」って、ちょっとだけ落ち込んでた。
今では飲み会の鉄板ネタやけど、あの時のユニバは、
ほんまに“自分の体の限界”を突きつけられた場所でもあった。
テーマパークで遊ぶためには安全があってからのこと思い知りました。
3. 丸イス破壊事件
昔、飲み屋さんの丸イスを破壊したことがあります。
座面が丸くて、足が4本で支えられている、よくあるタイプのイスです。
破壊の瞬間は、座ったときではなく、座っている最中。
椅子の足が私の体重に耐えきれず、KOされました。

お酒も入っていたので、その瞬間は何が起きたのかよくわからず、
ただゆっくりと後ろに倒れる感覚が残っています。
人間は怖いもので、危険を察すると、咄嗟に横にあるものを掴もうとするんですね。
私も例に漏れず、何かにすがろうと手を伸ばしていました。
その瞬間、飲んでいた人たちが一斉に振り返り、「大丈夫!?」と心配の声。
……でも、イスが体重に負けたとわかるやいなや、店内は大爆笑。
幸いケガはなく、笑いも起きて、めでたしめでたし。
とはいえ、お店には本当に申し訳ないことをしました。
しかも、地元の先輩が働いていたお店……。
お許しいただけて事なきを得ましたが、先輩、あのときは本当にすみませんでした。
それ以降、私はイス、ベッド、何に対しても“耐荷重”を調べるクセがつきました。
でも、今は違います。もう、耐荷重を調べる必要はありません。
あのとき壊れていたのは、椅子だけじゃない。
“太っていても痩せようとしない、自堕落な心”でした。
4. 階段が苦行でエレベーター探しが早くなる
太っていた頃、私は本当に階段が嫌いでした。
だって登るだけで息が上がるし、汗もかくし、もう最悪なんです。
サラリーマン時代、私の部署は3階にありました。
最初はエレベーターを使って事務所に向かっていたんですが、ある朝、上司にこう言われました。
「ダイエットも兼ねて階段で行きなさい」
いやいや、しんどい仕事の前に、しんどい階段まで登れますかって話ですよ。
当然のように、こっそりエレベーターを使い続けました。
でもある日、バレました。エレベーターから降りた瞬間、上司に遭遇。
「あれ?階段使わんのか?」
……あの目線、忘れません。
そこから私は、人目を避けてエレベーターに乗るようになりました。
なるべく早く出社して、誰にも見られないタイミングを狙う。
完全にダメなやつですよね。「見られなければOK」みたいな。
私はさも「階段使ってますよ〜」みたいな顔して上司に挨拶してました。
中身はただのズルいデブです。
そんなこんなで、“街中でもエレベーターを探すプロ”になってました。
どのビルにどこから入れば昇れるか、視野が広がりましたね。悪い意味で。
今でも実は階段は好きじゃありません。
でも、息が上がることはもうありません。汗もかきません。
上司の言葉に素直に従っていれば、もっと早く痩せてたかもしれません。
でもまぁ、街中で誰よりも早くエレベーターを見つけられる、
「無駄な特技」だけは手に入りました。
5. 採血で手間がかかる
体重140kgともなると、全身が脂肪に包まれた状態になります。
その結果──血管、全然見えません。
で、見えへんということはどうなるか。
そう、採血でめっちゃ手間をかけてしまうんです。
健康診断や病院で採血の時、看護師さんに必ずこう聞かれてました。
「採血、いつもどちらの腕でしてますか〜?」
つまり、「どっちがまだマシですか?」ってことやね。
新人さんが担当すると、だいたい途中で先輩にバトンタッチ。
ゴムチューブでぐいっと圧かけて、グーパーさせて、
それでも「……うーん、ちょっと難しいですね」ってなる。
集団健康診断のときなんか、私の採血で後ろに列ができるのはお決まりコースでした。
でも今は違います。
痩せた今、血管が…めっちゃ主張してくるんです(笑)
姉が看護師なんですが、私の腕を見て一言。
「今ならどこでも採血余裕やな〜!」
まじで、「あれ?こんなとこにも血管あったん?」ってくらい、
”初めましての血管たち”がこんにちはしてきます。
そのたびに、ちょっとテンション上がってる自分がいます。
6. とにかく汗!匂い対策が大変
デブにとって、夏場はただの地獄です。
動かなくても、呼吸してるだけで汗が出てくる。
しかもそれがすぐ染みて、シャツが臭う。
「臭いって思われたくない!」
その一心で、高校時代の私は毎日Tシャツを5〜6枚持ち歩いてました。
朝練のあとに1枚、授業中に汗かいたらまた1枚。
部活前にまた着替えて、夜の休憩で着替えて、帰宅前にもう1枚。
一日中、Tシャツ着替えマシーン状態。
友人にはよく言われてました。
「お前、見るたびにTシャツ変わってるやん!ファッションショーか!」
でも、そのおかげで私は──
「清潔感のあるタイプのデブ」
っていう、なかなか得がたい称号をいただいてました(笑)
今思えば、そんな大量のTシャツを毎日洗ってくれてた両親にはほんま感謝。
部活も勉強も忙しかったのに、文句ひとつ言わず支えてくれてました。
そして、「臭わないように着替える」は思いつくのに、
「汗かくなら痩せた方が早いんちゃう?」にはたどり着かんのが、
なんとも高校生らしくて、ちょっと可愛い話やなって思います。
7. 電車では2人分の場所をとる
サラリーマン時代、毎朝乗ってた電車には6人掛けの椅子がありました。
でも、私が座ると──その椅子は5人掛けになります。
いえ、厳密には「5.5人掛け」ぐらいにはしてたつもりなんです。
でも、どう頑張っても隣の人の片尻がギリ浮く感じ。
そりゃ誰も座ってこんわな、って自分でもわかってました。
最初は「もうちょい詰めてくれたら座れるやろ…?」って思ってたけど、
ある日、真顔で横からスッ……と立ち去られて、悟りました。
「あ、これは“圧”なんやな」と。
それからは自分が座ることで“1席分奪ってる”意識が芽生えて、
自然と端っこの席ばっかり狙うように。ちょっとでも“被害”を最小限にね(笑)
でも今は違います。ちゃんと“1人分”で収まる。
隣の人が座ってきても、私の太ももが押し返すこともない。
電車の椅子って、こんなに快適やったんや…って、痩せて初めて気づきました。
昔は電車に乗るたび、「私 vs 社会のパーソナルスペース」みたいな戦いしてたけど、
今はちゃんと、「お互いさま」って顔して座れるようになりました。
8. 寝るだけで騒音被害
サラリーマン時代、営業車で先輩と外回りに行ったときのこと。
昼休憩に2人で車を止めて、仮眠をとることに。
私は秒で夢の世界へ。
気持ちよ〜く昼寝して、昼からの仕事に向かおうとしたとき、
先輩から一言。
「寝るのはいいけど、俺が寝てからにして。うるさすぎて寝られん」
……え?何がうるさいんですか?
……あっ、私の、いびきですね。なるほど。
気づけば車内には、私のいびきが堂々とこだましていたようで、
先輩の仮眠タイムは、ただの騒音地獄になっていたようです。
これは一度や二度の話ではありません。
友人たちとの旅行でも「たかひろの横は地響きするから寝られへん」と言われ、
部屋割りのときは毎回“隔離対応”。
つまり私は、「うるさくて寝るだけで迷惑な男」
寝るだけで騒音を提供していたわけです。
ちなみにいびきの騒音レベルは洗濯機や掃除機と同等みたいです。
詳しく知りたい方は👉こちらのページを参考までに
でも、痩せてからというもの、いびきもピタッと止まったようで。
前から旅行に行っていた友人の家で、お酒を飲んで寝落ちした時に、
「静かに寝るようになったなあ」と言われて友達も安心していました。
昔の私は、“寝る=破壊活動”みたいなもんでしたが、
今はようやく、「ただ寝るだけの一般人」になれました。
9. 「デブ」は挨拶か?ってくらい日常にあった
ある日、先輩にこう聞かれました。
「なあ、デブって言われて傷つかへんの?」
私は笑いながらこう返しました。
「言われすぎて、“おはよう”とおんなじ感覚ですわ」
いちいち反応してイラついたり、傷ついたりしていたらキリがない。
だから私は、もう吹っ切れてるフリをしてました。
でも、気にしてないように思っていても、
「デブ」って言葉で、どこか傷ついてたのかもしれません。
ただ、そこで一つ気づいたことがあります。
相手が傷つくようなことは、たとえ冗談でも言っちゃいけない。
表面上「気にしてへんで〜」と言ってても、
本当はグサッときてることなんて、誰にだってあります。
言葉って、ナイフにもなるし、救いにもなる。
だから今は、自分の体型だけやなく、人にかける言葉にも気をつけたいと思うようになりました。
10. 体もキツいけど、心がキツかった
正直、太ってて困ったことって、体のこと以上に──
人に迷惑かけてる自覚があることがいちばんしんどかったです。
電車で場所を取ってしまう。
イスを壊してしまう。
いびきで人の眠りを妨げる。
採血で看護師さんに手間をかける。
匂いを気にして何度も着替える。
そして、「デブ」と言われて笑って返すしかない自分。
誰かに何かをされて傷ついたというより、
「自分がまわりに迷惑をかけてる」って感覚が、じわじわ心を削ってました。
でも太ってたからこそ、気づけたこともあります。
- 人の気持ちを考えること
- ちょっとした一言が誰かを救うことも、刺すこともあること
- そして、「自分で自分を諦めてたら、何も変わらない」ってこと
今も私は完璧じゃないし、まだまだ課題もあるけど、
少なくとも昔みたいに「変わりたいけど無理」って自分にフタをすることはなくなりました。
まとめ
この記事は、ただの“おもろかった失敗談”じゃない。
あの頃の自分に、「ここまで来れたで」って伝えたくて書いています。
そして、もし今この記事を読んでるあなたが、
昔の私と同じように「変われないかも」って思ってるなら──
安心してください。変われます。
まあ何が言いたいかっていうと──痩せたらイスも壊れんし、寝ても平和って話です。
太っててしんどかったことを笑えるようになるまで、時間はかかったけど、
変わった今だからこそ言えることもたくさんあります。
「痩せて気づけた、よかったこと」はこちらにまとめました
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